CP価格

6月29日に7月のARAMCO価格が発表されましたので次の通りご報告致します。

7月CP
プロパン $ 575 /MT(前月比-$25)
ブタン  $ 545 /MT(前月比-$25)

アラビアンライト原油の6月2日~30日の平均価格は$70.718/BBLです。
尚、7月CPのアラビアンライト原油熱量換算比は、プロパンで99.2%、ブタンで95.3%となっております。

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CP決定の背景

原油先物価格の推移

上旬: BRENT: 64.63 ⇒ 66.87 WTI: 62.52 ⇒ 64.98

上昇要因:トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が電話会談を実施し、米中間の関税をはじめとした通商協議のさらなる進展による好調な需要への期待感が広がったこと、米労働省が発表した雇用統計において非農業部門就業者数の続伸や横ばいな失業率が見られ、好調な経済状況が底堅く続くと見られたことなど。
下落要因:OPECプラスの有志8カ国が、5月6月に続き7月も当初予定を上回る減産緩和を実施する方針を発表したことで、さらに需給が緩むと予想されたこと、EIA石油在庫統計において、原油は取崩しとなったが各製品が軒並み積増しとなったことで、夏のドライブシーズンを前にしてエネルギー需要減の警戒感が強まったことなど。

中旬: BRENT: 66.87 ⇒ 77.01 WTI: 64.98 ⇒ 74.93

上昇要因:6/13にイスラエルが「ライジング・ライオン作戦」と称し、核開発施設を含むイランの各都市を爆撃、軍部トップや核科学者を殺害。イランも同日に反撃としてイスラエル本土を爆撃。
連日各国から対話での解決をと呼びかけが続いたが実現には至らず、イランによるホルムズ海峡封鎖や米国の攻撃介入による戦局の泥沼化が懸念されたこと。
特に世界の石油のうち約20%が通過するホルムズ海峡が閉鎖されれば、原油価格は1バレル当たり120-130ドル前後に跳ね上がるという見立ても出回ったことで原油価格は急騰した。
下落要因:一方で、ホルムズ海峡を封鎖してもイランは自分の首を絞めるだけであり、また中東からの石油製品調達量が最も大きい中国をはじめとして世界中が黙っていないという見立てからホルムズ海峡封鎖は実行に移さないだろうという声もあり、価格上昇を抑える要因となった。

下旬: BRENT: 77.01 ⇒ 67.61 WTI: 74.93 ⇒ 65.11

上昇要因:6/22に米国がイランの核施設を局所的に攻撃。同日、イランはイスラエルへ報復攻撃。イランが中東域内の米軍関連施設を攻撃するという見立てからさらに緊張感が高まったこと。
下落要因:6/23には事前通告のうえイランがカタールの米軍基地を攻撃も大きな被害は無し。イランのメンツを保つための形式的な攻撃であることが見て取れ、攻撃が続く中原油価格は大きく下落。
その後ほどなくしてトランプ米大統領より両国の停戦が実行されるとアナウンスがあり、両国最後の攻撃があったのちに、一旦攻撃は止んだ。その後両陣営とも勝利を主張し、攻撃が止まっている状態がしばらく継続しており、イスラエルがイランを攻撃する理由もこの瞬間はないことから、原油価格も下落した後に再度大きく上昇することは無く推移した。

CP先物価格の推移

上旬: CP先物 $577 ⇒ $584

原油の底堅い値動きに伴い、中東FOBもフラットから上昇の値動きとなった。インドを中心に買い手が散見されたが、商戦が7月後半に移行するにつれて売り手が見え始め、大きな値動きは見られなかった。中東カーゴは基本的にブタン付きであり、韓国勢からはブタン需要が聞かれているものの他からの買い気は弱く、プロパン>ブタンの格差のさらなる拡大が予見された。

中旬: CP先物 $584 ⇒ $607

原油価格に伴い上昇。アラビア湾ではGPS障害が発生し複数船に影響が出ていると報告されたこと、またホルムズ封鎖の懸念から物理面での供給懸念がマーケットを押し上げた。
米国では積荷役遅延が発生しており期先のアジア着カーゴのタイト感があったこと、また先行き不透明な中東情勢悪化に伴い手前での現物確保としたい心理から手前高が進行した。

下旬: CP先物 $607 ⇒ $575

原油価格に伴い下落。中東情勢の不安定さからスポット購入を非中東品とする動きもあり買い気は落ち着いた。一方で中東からの供給懸念は聞かれておらず需要に対して供給過剰の懸念も生じた。最終的に発表されたCPはマーケットの予測よりも低いものとなった。米中関税の煽りを受けてはいるものの、今後マーケット感を見て中国の潜在的な需要家が調達に動く可能性がある。

7月CPについて

6月29日(日)に発表された7月CPは、プロパン$575/トン(前月対比-$25)、ブタン$545/トン(前月対比-$25)。
7月CP先物価格は原油価格が大きく動いたことで連動して動きを見せた。4・5月の米中間の報復関税が主軸となっていた値動きから一転し、中東情勢悪化に伴った供給懸念が軸となっていた。
中東LPGカーゴの6月積荷役では大きな遅延・混乱は見られなかった。各船会社も懸念は示しつつもアラビア湾への航行を制限はほとんどしなかったこと、またLPGでは中東で1,2位の出荷量を誇るイラン(殆ど全量が中国向け)も出荷拠点はやはりホルムズ海峡の内側にあり物流を拘束されることは無いとの見立てが強く、結局ホルムズ海峡が封鎖されなかったことがこれを実現した。
こうした見立てがあったこと、また夏場は一般的にLPGの非需要期であり基本的に前月比マイナスの値付けが予想されることから、前月CPを超えるマーケット感が醸成されたのは中東情勢の緊張がピークとなった月中数日のみであった。一方で、CP発表直前までは$590前後の水準(プロパン)は維持されると考えていたマーケット予想とは裏腹に7CPは低めに着いた印象。
米中関税は引続き影響しており、中国勢のプロパン需要から引続きプロパン>ブタンの格差が継続、7CP先物価格のPB格差も常に$30前後が維持され続け、最終的にもブタン対比プロパンが+$30/MTとなった。このP>Bの環境はやはりしばらく続くものと見られる。

今後のマーケットの見通し

・中東情勢はしばらくは安定しそうでありイスラエルが攻撃を正当化する際に掲げてきた理由(ウラン濃縮が進み核兵器が作られる前に叩く)は達成されたとの見方が強く中東情勢は安定化に向かっている。
しかし、イランの核開発は一旦破壊・遅延されたものの、イランは明確に核開発を止めるつもりはないと宣言している。米国としては高濃縮ウランの製造が見られた場合には再度の攻撃を示唆しており、今後の核協議再開には早速暗雲が立込めている。今の睨み合いの状況が続くようであれば、緊張状態の再度の高まりが近い将来(1~2年後)に現れる可能性はそれなりに高いと見られる。
イランに課せられた制裁解除も保留のまま。
・一連の中東情勢を受けてアラビア湾を航行する船の保険料が上昇。1航海あたり数万ドルのコスト増が見込まれており、中東積極東向けカーゴはコスト上乗せ前提のマーケットとなる。
・原油価格は6月中に再び下落。OPEC+の6月減産緩和実績が予定通りか、また8月以降も減産緩和スピードを速めるのかに注目が集まる。現状は供給が過剰であるとの見立てが強い。
・5月12日に発表された米中関税の90日間の緩和は、8月中旬にその期限を迎える。中国の石油化学業界は急な貿易政策の方針転換に対応することが難しく慎重な姿勢、つまりは需要増の方針はなるべく取らないようにしている模様。かかる環境下、5月下旬の米国商務省からの通知により、米国企業が中国へのエタン・ブタンを輸出する際にライセンスが必要となり、米国から中国へのほぼ一本化されたフローが滞ることが懸念されていたが、7月に入りようやく米国各サプライヤーにライセンスが下りた状況。米中関税問題については緩和する見方が一定数あり、ある程度下支えされるマーケットと想定されるものの、引き続き地政学的要因によって価格変動が大きいマーケットが継続すると考える。