安全データシート(SDS)制度概要

作成日 2022.03.01
安全データシート(Safety Data Sheet、以下SDSという。)とは、危険有害な化学物質等について、譲渡提供者の有する危険有害性等の情報を、それを取り扱う事業場の労働災害防止に活用するシステムとして、化学物質の安全性に係る情報提供制度が創設され、当該制度に基き危険有害な化学物質等を取り扱う事業所に交付する化学物質の情報を記載したシートのことであり、LPガス業界においてもSDSの交付を実施する必要があります。

SDSの前身である「製品安全データシート(MSDS)」は当初、1992~3年に通産省・厚生省・労働省の3省合意にて労働省告示「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針」、厚生省・通産省告示「化学物質の安全性に係る情報提供に関する指針」が公布され、LPガス業界としては当該指針に基く(社)日本化学工業協会の指針を基に日本LPガス団体協議会(日団協)自主基準として「日団協技術基準F-001 製品安全データシート(MSDS)」を作成・制定し、改訂の都度LPガス取扱い事業所への交付を実施してきました。

また、2012年3月「JIS Z 7253 GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」が制定されたことに伴い、「安全データシート(SDS)」が従来のMSDSに替わって規定されました。 更に危険有害な化学物質等のリスクアセスメントの普及・定着のため、労働安全衛生規則が改正され、「安全データシート(SDS)」が従来のMSDSに替わって規定されました。更に化学物質のリスクアセスメントの普及・定着のため、労働安全衛生規則が改正され、2012年4月より危険・有害とされる全ての化学物質についてラベル表示及びSDSの交付が努力義務となった他、2016年6月の労働安全衛生法改正ではラベル表示やリスクアセスメント実施の義務化など制度対象が拡大しました。

なお、LPガスの含有成分では危険有害な化学物質等としてブタン・ペンタンが対象となっていましたが、2017年3月1日にエチレン、ブテン(ブチレン)、プロペン(プロピレン)が追加されています。

改正労働安全衛生法の表示・文書交付制度の具体的な実施方法としては、JIS規格も改正を重ね任意規格から法規制に整合するよう整備・統合され、2019年5月にGHS改訂6版に準拠した JIS Z 7252及び JIS Z 7253GHS に基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル、作業場内の表示及び安全データシート(SDS)が発行されました。LPガス業界においては、この文書交付制度に基づきSDSを作成・使用しており、上記文書の改正や労働安全衛生法及び政省令改正があった場合には、これに対応するよう各種データ更新等を行っています。

*GHSとは
The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals の略で、世界的に統一されたルールに従って化学品の危険有害性に関する分類と表示を行うシステム。2003年7月に国連から勧告として提示された。
なお、弊社におきましては、今回新たに作成した「SDS」を各特約店様及び直売工業用消費者様等に交付しておりますが、再交付をご希望の方は、こちらをクリックし、ファイルダウンロードの上、ご活用下さい。

安全データシート(SDS)制度概要

本資料は、「日団協技術基準S労-001-2022 GHSに基づく液化石油ガスの危険有害性情報の伝達方法-安全データシート(SDS)作成・使用要領」に基く内容を記載してあります。

SDS交付の目的

SDSは、製品の供給者が当該製品の物質名・有害性及び安全のための予防措置等の情報を受領者(後述する交付対象者)に通知するため、労働安全衛生法により交付を義務付けられたデータシートです。受領者は当該SDSを基に労働現場において健康障害防止のための措置を適切に講じていく必要があります。液化石油ガスを労働者に取り扱わせるときは、SDS等を常時作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける等の方法により労働者に周知するものとします。(作業場内の表示)

なお、現時点において確認されているLPガス含有物質で、労働安全衛生法施行令第18条の2及び別表第9にて通知対象物となっている化学物質は以下の通りです。

ブタン 1wt%以上
ペンタン 1wt%以上
エチレン 1wt%以上
ブテン(ブチレン) 1wt%以上
プロペン(プロピレン) 1wt%以上
メタノール 0.1wt%以上

また、混合物としてのLPガス含有成分には上記指定物質以外にもプロパン及びエタンが含まれ、これらの可燃性ガスは危険物として労働安全衛生法施行令・別表第1にて指定されています。更に、これらの物質以外にも、管理基準の設定された物質や物質が特定されていない残渣分なども含有しますが、規制基準の閾値未満のためSDSには記載していません。

SDS交付の流れ

(1)SDS作成者

「SDS」は、輸入会社又は国内製造会社(供給者)が作成するものとされています。

「SDS」は、LPガス取扱事業者にLPガスを供給する事業者が交付するものであることから、本来は交付を実施する各供給事業者が作成することとなります。

しかしながら、LPガスの輸入会社又は国内製造会社から出荷された製品は、品質の大きな変更はなしに最終取扱事業者に供給されることより、輸入会社又は国内製造会社が作成し、流通段階の事業者(卸売及び小売事業者等)は、供給を受けている輸入会社又は国内製造会社が作成した「SDS」を使用(コピー)して交付可としています。

ただし、流通段階の事業者にてLPガスの成分・含有量等の変更を実施した場合は、当該事業者にて新たに「SDS」を作成する必要があります。

(2)SDS交付対象者

「SDS」は、下記の事業者に供給者が交付することとなります。

  1. 高圧ガス保安法適用LPガス製造、販売又は消費事業者(工業・農業用等消費者)
  2. 液化石油ガス法LPガス適用販売事業者
  3. ガス事業法適用事業者
  4. 高圧ガス保安法第3条(適用除外)に該当するLPガス取扱又は消費事業者
  5. 液化石油ガス法適用LPガス業務用消費者
    従業者が勤務する業務用消費者は、交付を必要とする。但し、従業者のいない個人業務用消費者は、一般消費者と見なして交付の義務はないが、出来るだけ交付することが望ましい。
  6. LPガスを燃料とする自動車を使用する運送会社(タクシー会社等)

(注)労働安全衛生法31条の2に基づく「化学設備の清掃等の作業の注文者による文章等の交付」を行う場合において、当該交付文書の一つとして本SDSを使用するときは、法定該当作業を実施する請負人に交付とする。

(3)SDS交付不要対象者

下記の供給先等事業者及び消費者は、「SDS」交付対象から除外となります。

  1. LPガスを燃料とする自動車を使用する個人運送会社及び個人消費者
  2. 液化石油ガス法適用一般消費者

(注)但し、上記に該当する場合であっても、供給先等から交付の要望があれば交付して下さい。

(4)SDS交付後の記録

「SDS」を交付した場合は、下記の事項を記録しておく必要があります。

  1. 交付年月日
  2. 交付先名称・住所
  3. 交付者氏名

SDSの記載項目と注意事項

SDSの記載項目は、JIS Z 7253:2019で規定されており、下記の1~16項目となります。

  1. 化学品及び会社情報
  2. 危険有害性の要約(GHS分類)
  3. 組成及び成分情報
  4. 応急措置
  5. 火災時の措置
  6. 漏出時の措置
  7. 取扱い及び保管上の注意
  8. ばく露防止及び保護措置置
  9. 物理的及び化学的性質
  10. 安定性及び反応性
  11. 有害性情報
  12. 環境影響情報
  13. 廃棄上の注意
  14. 輸送上の注意
  15. 適用法令
  16. その他の情報

「SDS」に係る法令

法律 該当事項
労働安全衛生法 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
危険物・可燃性のガス(施行令別表第1第5号)